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作品紹介

四代目市川猿之助 明治座に初登場!

作品紹介

昼の部

『傾城反魂香』

 近江高嶋の六角家の息女・銀杏の前は、絵師の狩野元信(門之助)を慕い、夫婦の約束を交わした。しかし、御家乗っ取りを企む家老がこれを阻み、元信を柱に縛り、姫を奪い去る。一心に念じる元信が自らの血で虎の絵を襖に描くと、不思議なことに絵の虎が抜け出し、元信を助ける。元信の弟子の雅楽之助(猿弥)は、姫救出のため後を追う。
一方、大和の絵師・土佐将監(とさのしょうげん)の館では、百姓たちが虎退治にやって来るが、将監(寿猿)は本物ではなく絵から抜け出た虎だと見抜くので、弟子の修理之助がこれをかき消す。将監はその腕を褒め、修理之助に土佐の名字を許す。
これを聞いてやって来たのは、将監の弟子・浮世又平(右近)と女房おとく(笑也)。吃音の又平に代わっておとくが土佐の名字を許して欲しいと頼み込むが、将監は絵の功もない又平夫婦を突き放す。絶望した又平は、おとくと共に死を覚悟する。最期の絵姿として、又平は手水鉢に自画像を描くが・・・
 近松門左衛門の『傾城反魂香』は全三段の時代物浄瑠璃ですが、近年の歌舞伎では浮世又平が主人公となる「土佐将監閑居の場」のみが独立して上演されてきました。昭和四十五(一九七〇)年、三代目猿之助は序幕の「近江国高嶋館の場(おうみのくにたかしまやかた)」を復活上演することで、本筋の御家騒動の背景を描き、「土佐将監閑居の場」へと物語を展開させました。三代目によって再構成された義太夫狂言をお楽しみ下さい。

『蜘蛛絲梓弦』

 平安時代、物の怪に取り憑かれた源頼光の館では、家臣の碓井貞光(男女蔵)と坂田金時(亀鶴)が宿直して頼光を守護している。その二人のもとへお茶を持参したのは、童の熨斗丸(のしまろ)(猿之助)。しかし、貞光と金時が変化だと怪しむと、熨斗丸は蜘蛛の糸を出して姿を消す。その後、薬売りの彦作(猿之助)や新造の八重里(猿之助)が頼光を訪ねて来るが、これらも全て物の怪。物の怪を逃して悔しがる貞光と金時のもとへ、座頭の亀市(猿之助)が姿を現すので、二人は仙台浄瑠璃を所望する。だが、この亀市も物の怪で、二人はその後を追う。
やがて奥から頼光(門之助)と傾城薄雲(猿之助)が現れ、逢瀬を楽しむが、俄に薄雲の様子が怪しくなるので、頼光が剣で斬りかかると、薄雲は蜘蛛の糸を出して消える。この騒ぎを聞いた家臣の渡辺綱(猿弥)と卜部季武(米吉)は、蜘蛛の化生の仕業と察して、平井保昌(右近)にも知らせ、その後を追う。やがて葛城山に千年の功を得た蜘蛛の精(猿之助)が現れ・・・
 古くから伝わる源頼光の土蜘蛛退治の説話は、能楽や長唄舞踊の『土蜘』など、数多くの作品に取り込まれてきました。『蜘蛛絲梓弦』は、明和七(一七六五)年に江戸市村座で初演された作品で、蜘蛛の変化を早替りで見せ、好評を得ました。この度は、新猿之助が童、薬売り、新造、座頭、傾城、蜘蛛の精の六役を早替りの趣向で踊り分ける注目の変化舞踊です。

夜の部

『通し狂言 天竺徳兵衛新噺』


 船頭の徳兵衛(猿之助)は、先頃、嵐で異国の天竺へ流されて日本に戻ってきたことから天竺徳兵衛と呼ばれている。博多沖の船の中で、徳兵衛は朝鮮国王の臣下で、日本転覆を謀った木曽官の霊(猿弥)に会い、自らが木曽官の子息であることを知る。出自を知った徳兵衛は、父から蝦蟇(がま)の妖術を授かり、父の大望を継承して日本転覆を志す。その後、筑前国今川館に忍び入った徳兵衛は、日本の名刀・浪切丸を盗むが、浪頭の名鏡は、今川の奥方葛城(萬次郎)が所持し、枝折姫(笑也)と共に落ち延びていく。その後を追う徳兵衛は・・・
 実在の人物「天竺徳兵衛」の伝説は、江戸時代では数多く歌舞伎化されてきました。中でも徳兵衛が妖術を使う異国の謀反人として設定されることで、奇想天外な物語が生み出されてきました。本作は、鶴屋南北の『天竺徳兵衛韓噺』を中心にしながら、同じく南北の『彩入御伽草』の小幡小平次の怪談話を綯い交ぜにして、三代目猿之助によって昭和五十七(一八八二)年に歌舞伎座で初演された猿之助四十八撰の内のひとつです。大蝦蟇に乗った徳兵衛の屋台崩しをはじめ、殺しの場での小平次とおとわの早替り、幽霊・小平次の仕掛け、徳兵衛の葛籠抜けや宙乗りなど、歌舞伎のケレン味を存分に用いて、誰もが楽しめる作品です。新猿之助による壮大なスペクタクルに富んだ通し狂言をお楽しみ下さい。